外出することのメリットを探そう
生活の中で行う拘縮予防を例として
[南館3 階 | 援助員 寺本 悠二、川尻 彩花、伊澤 雅記]
甲寿園は、昭和45年4 月1 日開園され甲子園のある兵庫県西宮市の甲山にあり阪神西宮駅よりバスで30分山を登った所にあり緑も多く春には桜、秋には紅葉が見られる自然豊かな所に建てられました。私達のフロアは52 床あり、その中には認知も少なくご自分のペースで過ごされる方・帰宅願望が強く落ち着かない方・寝たきり状態で意思疎通が難しい方など様々な入居者が暮らされている。そんな方々が「もし外出・外気浴をして頂くとどのような変化が 起こるか?」「また、外出・外気浴をしたことによって、これからの生活で何か得ることは出来るのか?」と考え、私達 は事例にして取り組んでみました。
> 事例(1)
S.N 様(84 歳、女性、要介護度3) 現疾患:高血圧など
平成25年3月1日に入所され、トイレ誘導を行っていたが入所当時より全く立位なく今はオムツ交換に変わっている。車椅子を自操され、息子さんの名前を呼ばれフロア内を探し回られる。移乗介助やオムツ交換の際には、体に触ると痛みの訴えがある。一般的なタイプの車椅子に座られているが前傾姿勢になられることがある。前傾姿勢になられるのは内臓の病気ではないかと病院へ通院に行きましたが、内臓には異常なく原因は不明でわかりませんでした。
①中庭を1 周し隣にある施設の前の紫陽花などの花を見て、外気浴を二度行う。初回は笑顔少なくしんどい様子でした。2 度目は前傾姿勢で表情は硬いこともありましたが時々笑顔もみられ、話しかけさせてもらうといきいきとお話しして下さっていました。
②服を多く扱っている大型ショッピングセンターの西宮ガーデンズに一度出掛け店内を散策し食事をして来られました。緊張は見られずリラックスし、食事は笑顔で食べておられました。また、行きの車内では久しぶりに外に出られることが良かったのか「嬉しい!!」と何度も言われる。帰りの車内では「楽しかった」と言われ外出を満喫されました。
■結果・考察
初めはあまり変化がみられなかったが、外気浴や外出に出掛けられる度に表情も良くなり緊張はなくなりリラックスして楽しめるようになったと考えられる。
日常生活では、不安そうに息子さんを呼ばれることも減り落ち着いて来られている様子でした。これからも楽しみのある生活をおくってもらえるように外気浴だけでなく、行事やリハビリに参加して気分転換してもらえるようにしていきたい。
> 事例(2)
K.N 様(93 歳、女性、要介護度3) 現疾患:脳梗塞
リクライニング車椅子に座られ左に傾きがみられる。車椅子上では、傾眠されているか「帰りたい」と訴えが続いて いる。食事も自力で半分ぐらい食べられていたが、少しずつ自力摂取はできなくなってきている。夜間は、昼夜逆転に より起きておられることもある。
■実施
①中庭を1 周し隣にある施設の前の紫陽花などの花を見て、外気浴を二度行いました。紫陽花の花を見て無表情だったのが笑顔になり、花を触り「きれいねー」と言われ職員と話しをされていました。また、日を空け同じコースで外気浴に出掛けてもらうと一度目より体の硬さもとれ顔もしっかり上げられとてもリラックスされている様子でニコニコとされていました。
■結果・考察
以前から花は好きな方でしたが、外に出て花を見たことで自ら花をとってみたりお話しをされたりと自然に行動されたと考えられました。
日常生活では、大きな改善はみられていないが外気浴を行った際はリラックスされ体の緊張も和らいだと思われるので、だんだんと状態が落ちてきているが外気浴やドライブに出かけリラックスしてもらえたらと思いました。
> 事例(3)
N.S 様(79 歳、女性、要介護度3) 現疾患:アルツハイマー型認知症、脳萎縮など
一般的な車椅子で常時、指を口に入れておられ右に傾きがみられる。時々感情失禁や急に怒り出す事がある。食事 は、白いご飯は見えないのか手をつけられず、味が薄い物などはスプーンや手で混ぜ食べ遊びをされる。猫は好きだっ たが、本など見てもらってもわからない事もある様子でした。
■実施
①西宮ヨットハーバーまで、ドライブに出かける。ヨットハーバーに着くまで終始無言で口に指を入れておられ、悲しげな表情をされていた。車から降りると口から指を出されることもあったが、表情は変わらず無言のままでした。
■結果・考察
あまり、変化がみられなかったが施設内では終始指を口に入れられている為外に出た事で口から出されることがあったので外出により気分に変化があったと考えられました。外気浴や外出に出掛けられることで猫の事を思い出されたり表情や態度に変化がみられると考えられるので、また外に出掛けられたらと思いました。
今回外出・外気浴に行くことによって、落ち着かない入居者の中で見た目では変化が見られなかったご入居者もおられました。外出先ではいつもと変わらず「何よ!!」と言い怒鳴っておられた。しかし、顔に出ないだけで施設内では終始指を口に入れられている為外に出た事で口から指を出されることがあった。普段同じ事しか話されない入居者が色んな事を話されたり、花を手に取ってみるという行動に移す入居者もおられました。
普段の生活では、活気も出てきてよく職員や周りの方に話されるようになられたり、表情の変化が見られるようになり外出・外気浴を続けるとさらに気分の高揚がみられると考えられました。これからも外出や外気浴の時間をつくり、楽しんで生活してもらえるように援助していきたいと思いました。