「朝起きて夜寝る」・・・人々にとって快適な生活を送る上ではとても大切な事ではないでしょうか。高齢者を援助する私達職員も施設利用者の皆様に夜間しっかりと睡眠をとっていただき、気持ちよい生活を送って頂きたいと常に考えております。
そこで私達は、夜間不眠傾向であるS氏に対して日光浴によるメラトニン生成、食事によるトリプトファン摂取により睡眠の改善がみられないか試みました。日光浴やトリプトファンの摂取は睡眠に働きかける効果があることがメディアや様々な医療機関などで研究されています。
(基本情報) S氏 90歳 女性 要介護3
(既往歴) 狭心症、白内障、手首と腰の骨折、アルツハイマー型認知症
入居当初より帰宅願望が強く、トイレへ頻回に行かれたり、ご自身の衣類を整理しておられ、結果的に夜間不眠傾向で日中は傾眠されている事が多々ありました。
そこで私達はS氏に対して不眠が少しでも軽減できるよう取り組みを考えました。離床時いつもおられる席を、日光の当たりにくい従来の席から、窓際の日光のよく当たる席に移って頂く事により簡易な日光浴を行い、夕食時にはトリプトファンが多く含まれてるといわれているバナナを召し上がって頂く事により睡眠の改善がみられないかを試してみることにしました。取り組み前後の状態を比較する為に状態記録を作成し当日勤務の職員に1時間毎の状態記録を依頼し、記録の実地期間は取り組み前の6月7日から6月13日迄の1週間と取り組み開始の6月21日から7月4日迄の2週間としました。
記録をまとめた表より、取り組み以前と変わらず終始日中は傾眠がちで、夜間は睡眠時間が短く不眠傾向であり、取り組み前と同様の状態であり変化が見られないとの結果にいたりました。
課題として取り組み期間中、S氏は移動されている時が多く席におられる時間が比較的短かったこと等により日光浴が不十分であったことが挙げられるのではないかと思われます。
今回の短期間の取り組みにおいて日光浴やバナナの摂取による決定的な睡眠の効果は見出せませんでした。けれどもこれからも引き続き注意深く状態の観察を続けていき、加えて外気浴・散策等による日光浴を行い併せて他の方法も模索していきたいと思います。