利用者様の生活の向上を図る為に、昨今注目されているアロマエッセンスを使用し利用者様にあったアロマエッセンスを選び、配合したスプレーを衣服などに吹きかけ匂いによる嗅覚からの刺激を得て頂く事で、生活に向上をもたらすという研究を行いました。アロマコーディネーターの資格を持った職員の下、1週間のアロマを使用していない生活を観察し、1時間ごとの情報を収集した上で、続けて1週間アロマを使用した期間の1時間ごとの情報を収集し、統計をはかりました。
事例(1)
Kさん (88歳 女性) 要介護度3 平成24年12月3日入居
●既往歴 :・平成17年 白内障(両眼)・平成21年 左大腿頸部骨折
●現疾病 :鉄欠乏性貧血、アルツハイマー型認知症
平成26年1月に気管支炎にて入院され、大幅にADLが低下しました。退院されてから食思も低下気味で体重も減少し仙骨部に褥瘡ができやすくなりました。それによる痛みが原因なのか以前より熟睡されることが滅多になく昼夜逆転となる日が多くなり、日中に険しい表情でおられることがよくありました。
夜間に安眠していただき疲労を軽減する為、就寝時間後の22時~翌5時までアロマ配合のルームスプレーを1時間ごとの見回り訪室時に枕元のバスタオルに染み込ませて様子観察を行いました。
アロマエッセンスを使用していない1週間と使用した1週間とを比べると、格段に睡眠時間が増え睡眠の質が上がったことが確認できました。使用したアロマエッセンスがKさんの体質に合い、不快な香りで無かった事が分かります。効能から考え、導眠効果がもたらした睡魔により快眠に繋がったことが判明しました。更に、夜間に質の良い睡眠がとれたことによって、日中のKさんの行動や表情にも変化が見られました。他職員より、日中の表情が穏やかになり、食思が上昇し、介助に対する苦痛表情が和らいだと報告を受けました。これらに大きな成果を感じ、研究が成功であったと実感しました。
事例(2)
Mさん (77歳 女性) 要介護度4 平成25年9月27日入居
●既往歴 :・平成15年 変形性関節症(人工関節)・平成24年 糖尿病
●現疾病 :アルツハイマー型認知症
夜間によく熟睡されているにも関わらず日中、居室にこもって寝ておられることが多々ありました。その為褥瘡になるリスクも高く、できるだけ日勤帯の時間は食堂などの共用スペースで過ごしていただきたく9時~17時の1時間ごとに衣服にアロマ配合のルームスプレーをふきかけ様子観察を行いました。
アロマエッセンスを使用していない1週間と使用した1週間とを比べると、それほど目立った差が出ることはありませんでした。前者のKさんに比べ、好みの香りではなかった可能性があること、嗅覚からの刺激があまり作用していなかった事などがあげられます。アロマは自然の植物を使っているため、効能や刺激など、個人によってさまざまな違いが出てくるものであり、使用方法によっては今回のようにあまり効果がみられない結果になるのも自然の物を使っているがゆえのことのように思います。なかなか、すぐには質の向上に直結はしませんでしたが、今後使用方法や効能を変えて研究することで、Mさんに合ったものが見つかるのではないかと思います。
今回この研究を行った結果、快適に過ごして頂くという目的はアロマ使用前に比べると、利用者様の表情や仕草に変化がみられたことから、アロマ使用前に比べると質のよい環境になっていたことが分かります。KさんとMさんとでは、大きく異なった結果となりましたが、アロマは使用する人の体質や環境、使用方法などによっても変動がみられます。今回はアロマ初心者(利用者様、職員)が気兼ねなく、使用しやすいように、施設での使用となる為どの職員でも簡単に行えるといった点を考慮してルームスプレーとして使用しましたが、ボディクリームやマッサージオイル、アロマ風呂など他にも沢山の使用方法があり、ルームスプレーではない方法で試すことで、異なった結果が得られると感じそれらを今後の研究として挙げていきたいと思います。また、今回の研究材料であったアロマは、利用者様だけでなく、職員にも良い刺激となり、良い香りの匂いがするというだけで普段とは違った気分になり、アロマを使用していた1 週間は普段に比べさらに気分よく援助が出来たと報告を受けています。利用者様、援助員共に良い刺激となるアロマをこれからより一層身近なものにしていき、利用者様の生活の質の向上につなげたいと思います。