実践研究発表/社会福祉法人甲山福祉センター 特別養護老人ホーム 甲寿園

特別養護老人施設における栄養 および排便障害の改善への取り組み[管理栄養士:小崎 啓子]

緒言

特別養護老人施設に於いては、利用者の半数以上が、排便障害でなやまされている。そして、便秘治療は、便秘薬にたよっているのが現状である。私の施設では入所者の健康の良好な維持増進による高いQOL達成に資する為に栄養アセスメントと共に、入所者の多くが患っている排便障害の改善を目指して、食生活面からの改善を試みてきた。その一つが非薬剤である「繊維と糖類フコイダンを含むモズク」と「繊維(難消化性デキストリン)含有のゼリー」の有効性の検討である。そこで本研究では調理師や各フロアの介護職員と共に、継続的に実施出来る排便障害の改善を模索する中で、高齢の方たちの心身の負担を可能な限り軽減できる形での食事提供を試みてみることを目的として行った。

便秘対策の群細

■調査日程

2010年8月1日〜2011年7月31日

■試験材料と方法

グループ名が具体的になったことで、予定表を見たり聞いたりして何のグループがあるか分かるようになった。平行棒グループ、手芸グループは徐々に参加人数が増えている。複数のグループをかけもちされている方も多い。

【1】血液成分
ヘモグロビン濃度(Hb)はSLS-Hb法により、総タンパク質濃度(TP)は比色法(Biuret法)により、血清アルブミン濃度(Alb)は比色法(BCG法)により、総コレステロール濃度(T-cho)はDAOS法により、中性脂肪濃度(TG)は酵素法によって測定した。

【2】試験食材
自立可能入所者群と全介助者群に分けて、各々の群を2つに分け、現在同施設にて毎日の食事より摂取している食物繊維量10g〜15g/日に加えて一方には(1)モズク(乾燥重量3gうち食物繊維量1.8g)を追加して毎日提供した。又、もう一方には比較のため(2)Mctゼリー(日清オイリオ製、食物繊維量1.8g)を提供した。尚、両繊維性食材摂取の差をなくすためにMctゼリーに含まれている中鎖脂肪酸0.6gをモズクに加えた。各々4週間投与後、17日間のインターバルを置き、再び(1)の(モズク群)と(2)の(Mctゼリー群)を入れ替えてサイクルを繰り返す単盲験検査を行った。尚、本研究は、ヒト研究倫理委員会(神戸女子大学)の承認を得て行った。

(↑表1)試験食材の投与スケジュールを表している。投与食材の進め方と投与日数である。

結果

図1

(図1)は、縦軸に平常時の排便回数からの変化率を、横軸に試験材料の投与スケジュールを示している。自立可能入所者(Indp)と全介助者(Cared)の排便率を比較検討した。自立可能入所者の排便回数に対してモズク投与は7期間の投与期間中6期間は平常時の排便回数を増加させる傾向を示した。特に投与スケジュール番号8の期間中は0.5%の危険率で有意差を示し、その他投与スケジュール番号3,12,18,20,21の期間中では危険率16%以下であるが増加傾向が見られた。自立可能入所者の排便回数に対してMct投与は7期間の投与期間中3期間増加させる傾向が見られたが、増加率は低かった。全介助者の排便回数に対してモズク投与は7期間の投与期間中4期間増加させる傾向が示されたが、差の検定で危険率は最小でも12%以下を持つ値もなかった。全介助者の排便回数に対してMct投与は7期間の投与期間中すべて変化が見られなかった。

図2

図3

図4

図5

図6

(図2)、(図3)、(図4)(図5)、(図6)は、BMI、ALb、Hb、T-cho、TGのグラフである。縦軸は、(%)、横軸は、自立可能入所者と全介助者に分類しそれぞれ試験食材投与前と研究1年終了後で比較検討した。ALb、Hb、T-cho、TGは、基準値以内が自立可能入所者、全介助者とも研究前より研究1年終了後が著しく増加していた。BMI、体重も両者とも基準値以内が有意に高値を示した。

考察

本研究における排便障害の改善効果試験では、自立可能入所者群で両食品とも排便障害改善が認められたが、特に沖縄乾燥モズクがMctゼリーより、有意に効果があるという結果を得た。しかし全介助者群においてはいずれも便秘には効果が少なかった。血液成分、BMI、体重の値は、自立可能入所者と全介助者のいずれの群でも両食品投与により基準値以内の人の比率が有意に高値を示したことは、排便障害による身体的、生理学的状態の悪化がこれらの食品「繊維と糖類フコイダンを含むモズク」や「繊維(難消化性デキストリン)含有のゼリー」により改善された結果と考えられる。 今回の長期間の研究は、医師、看護師、介護職員スタッフ、相談員、調理師の協力が得られたことと、摂食機能療法の担い手である彼らの協力なしでは、不可能であった。また、的確な診断評価や治療方針などの工夫点として栄養サポートチームである栄養ケア・マネジメント委員会への理解を得る方法を採用した。ここで主治医を含めた他職種の意見を聞くことができた。このような園内システムの構築によって上記のような"乾燥モズク"での排便障害の改善効果の成功症例を経験することが出来たと考えられる。又、今回の経験は、各職員の特性を生かして便秘対策アプローチに携わる一つの方向性を示し得たと考えている。今後は本試験の有意義な結果を生かして今後もますます増加してゆくと考えられる高齢者のQOLに大きく影響する重要なマイナス要因の一つである排便障害の改善に向けて取り組んでゆきたいと考えている。

結論

老人施設入所者のうち自立可能入所者において排便障害はモズクおよびMctゼリーにより改善が認められ、特にモズクの効果は顕著であったが、全介助者には両繊維性食材とも効果が少なかった。しかしながら、両群共にこれらの食材による血液性状の改善傾向が認められた。

謝辞

この取り組みの実施に当たり、ご指導頂いた神戸女子大学梶原教授、松本助教、甲寿園狭間園長、板野甲山診療所板野緑子医師、ご協力頂いた甲寿園の入所者の皆様、職員の方々、岸管理栄養士、塩梅なにわ職員の方々及び"乾燥モズク"ご提供の沖縄県漁連糸満事業部(JF沖縄)様に厚く御礼申し上げます。

引用文献
1) Oユ Donnell LID, Virjee J, Heaton KW. Detection of pseudodiarrhoea by simple clinical assessment of intestinal transit rate. Br Med J 1990; 300: 439-44

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