甲寿園北館3階は、39名の方が利用されています。その中で経管栄養のご利用者様は4名おられます。
甲寿園だけではなく特別養護老人ホーム等の高齢施設で暮らしておられる方の、重度化がすすんでいる中、身体状況の為やそれに伴う経管栄養等の時間によって、ベッドでの生活が多くなりがちな利用者の方々が見受けられます。
その様な方々の日々の生活の質をどのように守り、継続していくことが出来るかという事が、私たちの大きな課題となっています。
経管栄養の利用者様の食事内容はこれまでは半固形流動食ニュートリートとウォーターでした。水分と栄養が1本化出来て簡素化出来る点、そして粘調度が高い事により下痢などの消化器症状が減って痰の貯留が減るのが見込める点、コストが安い点の3点から平成24年5月から半固形流動食カームソリッドに変更になりました。食事内容が変わった事で、以前は注入時間が長く利用者様にも負担がかかっていたが注入内容の変更により注入時間が短縮され、利用者負担も減ったと考えられます。そして注入回数もこれまでの1日3回(5:00・12:00・19:00)から、1日2回(9:00・16:00)になりました。
これによって、今まで日中もほとんどをベッド上で過ごされていた経管栄養の利用者様の離床を促し、車椅子に座って頂き、他の利用者様と一緒に過ごして頂くなど、日中の活動量を増やしていく事ができます。このように経管栄養の利用者様にも楽しみのある毎日を過ごして頂きたいと思い、7月1日から8月15日までを記録(資料1)して、今回の事例研究に取り組みました。
Aさん (100歳) 要介護度5
ご本人様からの訴えや発語はほとんどありませんが、ご家族様より、「少しの時間で良いので車椅子に乗って、外気に触れたり、他の利用者が集まるデイルームで一緒にテレビを見たり、話し声を聞く事で、自分もその中に居ると感じてもらいたい。」という希望があります。
参加して頂いたレクリエーション
(食事・水分は全て経管栄養の為、他の利用者様が飲食される時には、居室等に誘導しました。)
レクリエーションを行っている時間帯は14時から15時半頃ですが、体調等を考慮して30分から1時間程度参加して頂きました。
喫茶会・誕生日会等では音楽や雰囲気を楽しんで頂きました。そして、外気浴では外の新鮮な空気を吸い、中庭やベランダから甲山や紫陽花・ゴーヤ等の景色や植物を見て楽しんで頂きました。又、夏だったので、日差しや気温・湿度に注意しながら、他の利用者様と一緒に風通しの良い日陰で過ごして頂きました。
他の利用者様の中には優しく声を掛けて下さる方や、手を握る等のスキンシップをして下さる方もおられました。
7月12日には職員の声かけに対して、「ありがとう」と発語もありました。
今回Aさんの事例を取り組み、音楽を聞いて頂くと音楽に合わせて口を動かす、手を動かすなどの変化が見られました。そして、以前のように一日のほとんどをベッドで過ごされていた時と比べると、他の利用者様から優しく声を掛けて頂いたり、手を握って頂くなどのスキンシップが増え、眼を開けて過ごす時間が増えたように思います。又、日差しを浴び、新鮮な空気を吸い、風を感じる事で季節を感じて頂けたのではないかと思います。さらには職員の声かけに対し、「ありがとう」という発語も見られました。
今回の事例研究を通して、A様に限らず、全ての利用者様に季節の移り変わりを肌で感じて頂き、心地良い刺激のある毎日を過ごして頂けるように職員一同力を合わせて援助をしていきたいと思います。