社会福祉法人 甲山福祉センター 特別養護老人ホーム 甲寿園 Kabutoyama Fukushi Center | Kojyuen

実践研究発表 Presentation

事故防止にむけての取り組み~パート2~

安全安心な生活を目指して

[援助員:柴崎 安奈、眞名 野由美、行 昭洋、石川 幸男]

はじめに

私共の所属フロアでは、昨年度に続き2名の利用者様のモニタリングを1年間行い、事故減少に取り組んできた。今回は昨年12月入所の方を加え、3名の利用者様の事故について記録を行い、職員間の連絡を密に行った。また、事故原因を明らかにし、具体的な改善策を明記した上で、今後の事故減少と対応策について「転倒」と「異食」の事故に絞り検討を行った。

事例の取り組み

> 事例(1)

Hさん(女性、82歳、要介護度4、平成18年6月入居)

移動手段は車椅子で自操。自立歩行は不安定ながら可能で車椅子から立ち上がられ、独歩で廊下を散策される場合がある。以前に肋骨骨折からの痛みで立位を取る事が出来なくなり、座位や体位交換が困難になった。朝起床時にはベネット錠剤(骨粗鬆症の薬)を服用され、転倒時の骨折リスクは高い。その為、ご家族様から「歩行による怪我(骨折)は避けて欲しい」とご要望があり車椅子生活をされている。

■事故対策上の注意点

独歩で自由行動をされている際の転倒。

■前回の事故対策の状況

前回の事故対策期間中、独歩が多く見られ、「ベランダに出る」「他フロアへ行く」等あり、冬場には「独歩・ご自分での車椅子移乗・他室のベッドで寝る行動」は減少したが、春頃からまた「独歩での移動」が増え始めたので今回も事例研究で取り上げることにした。

■今回の事故対策の状況

廊下を独歩されていれば、直ぐに手引き歩行を行い車椅子に移乗していただく。また、ベッド移乗後は車椅子を乗りやすい位置に置き、靴も履きやすい場所に置く。Hさんが自分のベッドだと理解出来るよう、人形はベッド上でのみで使用する。(Hさんは人形を子どもと認識されている様子で、抱かれている間は落ち着かれている)そして、食堂では車椅子から椅子に移乗し、落ち着いて食事をしていただく。

■まとめ

転倒等が要因の事故は発生していないが、歩行不安定で常時見守りが必要である。独歩は以前と比較すれば減少しているが、度々食事中に座席から立ち上がり廊下の方へ歩いて行こうとされる場合もあり、今後も注意して見守りたい。最後にHさんの24時間行動内容について表2.1にまとめた。

[表2.1] Hさんの行動別回数(平成21年8月17日~平成22年8月12日)

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> 事例(2)

Tさん (女性、99歳、要介護度5、平成21年4月入居)

車椅子で自操される。歩行不可。短時間の立位は可能。ベッド臥床時に時折不穏になり柵を外し(下し)移動しようとされる。排泄は便意・尿意の訴えある場合はトイレ誘導を行い、その他の時間はおむつ交換を行う。

■前回の事故対策の状況

Tさんの特筆すべき行動として「トイレに行きたい」「自室のテレビ鑑賞(テレビをつけたまま寝る)」「ベッド上での独語」「ベッド柵を下される」の4点が挙げられる。この事から、事故対策上の注意点として「臥床時におけるベッドからの転落」「食事後(食堂から居室に戻られる際)ご自分でトイレに行かれる際の転倒」の2点を挙げた。以上の点から事故防止の為に、「ベッド下にマットを引く」「臥床時車椅子を居室から離れた場所に置く」「食事後(食堂での行事終了後)見守りが出来ない場合は居室誘導を促さない」等行った。

■今回の事故対策の状況

24時間の行動内容として「脱衣行為」が増加、「トイレに行こうとされる」「自室でのテレビ鑑賞(テレビをつけたまま寝る)」「独語」の行為が減少している。また、前回の事故対策期間にはTさん自身でトイレに行こうとされる場面があったが、最近はトイレの前で職員の介助を待つようになられたので事故対策から外す事にした。また、昨年8月以降脱衣行為が増加している為、今年7月より午前1時にパッド交換を行うようにした。その結果、脱衣行為の減少が見られるようになった。約1カ月の調査であるが推測するに、Tさん自身の尿取りパッドが濡れている事に対しての不快感が脱衣行為につながっていることが考えられる。一方、ベッド柵を下す行為に関しては、ケース記録からは原因が不明であり、今後も見守りを続ける必要がある。(帰宅願望の可能性がある)

■まとめ

去年4月に入居され1年半が経過し、園においての生活に慣れられ、日常生活全般において落ち着きがみられる。依然として「ベッド柵を下す」「脱衣行為」が見られるが、転倒事故等は発生しておらず、今後も注意深く見守りが必要と思われる。最後にTさんの24時間行動内容について表2.2にまとめた。

[表2.2] Tさんの行動別回数(平成21年8月17日~平成22年8月12日)

※斜字は前回の事例集計期間(平成21年6月4日〜平成8月16日)
※太字は(平成21年8月17日〜平成22年)
※標準字は(平成22年6月3日〜平成22年8月12日)

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> 事例(3)

Iさん(女性、77歳、要介護度5 平成21年12月入居)
アルツハイマー型認知症/意志疎通困難/不安定な歩行可能

車椅子で自操される。歩行不可。短時間の立位は可能。ベッド臥床時に時折不穏になり柵を外し(下し)移動しようとされる。排泄は便意・尿意の訴えある場合はトイレ誘導を行い、その他の時間はおむつ交換を行う。

■Iさんの事故発生の背景

独歩で自由行動をされている際の転倒。

■前回の事故対策の状況

日常生活において、転倒防止の安全ベルトを用いた車椅子での移動手段が中心。(下肢筋力低下により立ち上がり時のふらつき、不安定な歩行による転倒・骨折のリスクを回避する為、家人了解の下)また、ベッドには頭部側のみ柵を使用している。ベッド臥床時には独歩で廊下に出て来られ、不安定な歩行により転倒する可能性が高い。

■事故例

転倒事故は、入所後2回あり。平成22年3月に居室内で転倒され、顔面眉上部に6の裂傷・5針縫合する。 また6月に独歩で居室より廊下で排尿後、自尿に滑り転倒される。 その後、ベッド下にセンサーマットを試験的に使用する。 センサーマット使用後は、立ち上がり動作途中での歩行介助が可能であり、転倒防止効果が大きく、御家族様にセンサーマットを購入していただく。安全ベルトの使用についても見守り可能時は外し、食事時は車椅子より椅子に移っていただくようにした。 Iさんは多動な方で、直ぐに立ち上がり動くのではないかと考えていたが、落ち着いて椅子に座られ機嫌よく過ごされた。また、食事姿勢も改善して食べこぼしが減少した。 Iさんの「歩きたい」という気持ちを考え、1日3回歩行の時間を作りフロア内を1~2周、職員付き添いのもと歩いていただくようにした

■異食事故について

手の届く場所にある物を口に入れてしまう。入所後5回異食事故が発生した。
1)1月20日|2:00  >>> 居室内の洗面所に置いていた造花を異食。
2)5月30日|13:45 >>> 植木鉢の中にあった発泡スチロールを異食。
3)6月1日|21:00  >>> 食堂に飾っていた生け花を異食。
4)7月12日|14:30 >>> フロアで医療薬アズノールを唇につける。
5)7月16日|16:40 >>> 食堂にて将棋セットの駒を口に入れる。

■異食防止対策

ご自分で自由に動き回られるので所在の確認・環境整備に努める。

■対策後

甲寿園内は生活の場であり、手の届く場所にある物全てを排除する事は不可能であるが、 Iさんの行動範囲を理解する事で職員間の危機管理意識が高まり、 想定可能な事故を対策前より未然に防げるようになった。

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終わりに

2人の利用者様に関しては、昨年から事故対策の取り組みを継続しているので転倒事故は減少している。事故発生時は原因追求し、職員全員で情報把握し、再発防止に努めた結果未然に防げるようになった。しかし、新入所のIさんに関しては、転倒事故はなくなったが車椅子を自操され自由に移動される事で「異食」という新たな事故が発生した。今後、異食事故をなくすようIさんへの関わり、モニタリング、アセスメントを行い再発防止に努めたい。

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