実践研究発表/社会福祉法人甲山福祉センター 特別養護老人ホーム 甲寿園

口腔ケア/シンプルな取り組みから始まる口腔清拭[副主任援助員:高本 竜太郎]

はじめに

口腔ケアとは(歯磨きや入れ歯の手入れにより、口腔内の病気を防ぎ、誤えん性肺炎を予防して全身の健康を保持増進させ、リハビリテーションにより、咀嚼機能や舌の動きを回復させること)をいいます。これにより生活の質を高め、心身共に自立した生活を送る手助けをします。現在、南館3階では自立して歯磨きをする方と援助員が介助で口腔清拭を行っている方に分かれて口腔ケアを実施しています。しかし、利用者によっては歯磨きや口を濯ぐことを頑なに拒否されたりする場合もあり、全ての利用者にくまなく口腔ケアが実施できているかと言えば、必ずしもそうとは言えないのが現状です。 歯科医・歯科衛生士による歯科往診も行われていますが、全フロアの利用者対象となる為、早急性の高い利用者を中心に治療を行っています。このことからフロア利用者全員の口腔状態の様子観察は職員による口腔清拭時の観察が主となっています。 この現状を受け止め、改めて口腔ケアの重要さを認識し職員間で意識統一を図るという課題が明確となりました。 上記を踏まえ、今回の事例研究では3名の利用者の口腔内の問題点を取り上げてそれを改善する為の口腔ケアを約1ヶ月かけて試行しました。短期間ながら、今回取り組むことによってどれだけの効果が得られたのか、また現場での口腔清拭に対する意識がどう変化したのかを、経過観察を交えながら発表したいと思います。

事例概要と成果

事例(1)|歯肉からの出血の改善により口腔内環境の安定を図る

C・M氏(89才 女性 要介護度5)
●下顎歯は10本弱、上顎は歯根が数本残っているのみ。
●食事は自立・口腔清拭は一部介助。 
●咀嚼、嚥下状態共に現段階では問題はなし。
※研究開始直後、上顎歯肉より膿排出あり歯科受診・歯根抜歯(1本)し、様子観察中

■問題点及び目標

・口腔清拭時における歯肉からの出血を抑える。
・下顎脱臼による常時開口に伴う口腔内乾燥・舌苔付着による口腔内環境低下の改善。

■方 法

・今まで使用していた清拭具を再考し、ケアに適したものに変更。
・残渣物除去はもとよりマッサージを意識したブラッシング方法で掲示し統一を図る。
・マッサージを行うことで歯肉を丈夫にし、出血を可能な限り抑えられることを目標に試行する。

■結果及び評価

・出血はほぼ消失。歯肉の状態も安定している。
・残渣除去に加え、歯肉とともに口腔内全体のマッサージと粘調性の唾液除去で環境面では改善みられるものの、
 常時開口は依然継続しているため乾燥の改善に対して不十分な結果となっている。
・下顎亜脱臼もあるため、今後医療面とも連携した環境改善が目標としてあげられる。

事例(2)|歯肉の腫脹の改善により残歯の虫歯予防・本数維持を図る

H・N氏(77才 男性 要介護度4)
●歯は歯根が数本残っているのみ。
●食事・口腔清拭共に全介助。
●下顎亜脱臼あり咀嚼不安定 ※嚥下状態は時間かかるも大きな問題はなし。

■問題点及び目標

・口腔清拭時における歯肉からの出血を抑える。
・歯肉の腫脹及び残歯の虫歯予防・口腔内清潔保持。

■方 法

・今まで使用していた清拭具を再考し、ケアに適したものに変更。
・残渣物除去に加え下顎の残歯の維持を目標にマッサージを意識したブラッシング方法で掲示し統一を図る。
・マッサージで歯肉を丈夫にし、出血を抑えられることに加え残歯の維持を目標に試行する。

■結果及び評価

・出血はほとんど見られなくなる。本人に説明するとたいへん喜ばれる。
・今回の事例取り組みで初めて上顎歯肉の膿貯留が判明し治療に取りかかれた。
 口腔内環境の改善への一歩として引き続き状態観察に努める。

事例(3)|重度歯肉炎(歯槽膿漏)からの口腔内状態の改善及び安定化を図る

M・T氏(89才 女性 要介護度4)
●残歯上顎は多数あるが下顎歯は歯根を含め数本残っているのみ。
●食事・口腔清拭共に全介助。
●咀嚼・嚥下状態共に現段階では特に問題はなし。
※歯科往診時、重度の歯肉炎(歯槽膿漏)であるとの診断あり、急遽事例対象とする。

■問題点及び目標

・歯肉炎による口腔清拭時の歯肉からの出血を抑える。
・口臭の軽減。

■方 法

・今まで使用していた清拭具を再考し、ケアに適したものに変更。
・歯肉炎の軽減・改善を目標にマッサージに重点を置いたブラッシング方法で掲示し統一を図る。

■結果及び評価

・歯肉からの出血がほとんどなくなり腫脹も軽減する。
・もとより口腔清拭に対して強い拒否が見られたが、ブラッシングの変更
・統一でマッサージを重点に置いたことに加え口腔内の状態が落ち着いてきたことからか
 ほとんど拒否が見られなくなった。
・出血と清拭の不備を因とする口臭もほとんど無くなった。

まとめ

今回短期間にもかかわらず各事例で口腔内環境に改善が見られました。
しかし、歯槽膿漏や膿の貯留は今回の取り組みで初めて確認されたことであり、本来であれば日常の口腔清拭で早期発見、早期治療が出来たものであったと思います
。 病状確認が遅れて悪化してしまったのは食後の口腔清拭に対して職員間で統一が図れていなかったのもその要因の一つとしてあげられます。 今回の取り組み中、やはり口腔内の状況の変化に改めて驚く職員も見られ、普段の清拭にほんの少し時間をかけて、ほんのひと手間加えるだけで大きく改善できる事があるのに気付く良いきっかけになったと思います。少しずつながらも対応でき始めたことも一つ前進したと思います。

美味しく食事を食べていただくだけではなく、歯や歯茎の健康維持や残渣を除去し清潔を保つことで誤嚥性肺炎の予防など、介護職員が出来る口腔清拭の基本的なことが今回の取り組みで再確認できたこととともに、従来の対応では足りないという事も浮き彫りになりました。
今回の事例を教訓に、職員各自で口腔ケアに対してもっと関心を持ち、さらなる意識の統一・連携を図っていきたいと思います。

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