実践研究発表/社会福祉法人甲山福祉センター 特別養護老人ホーム 甲寿園

椅子に座って美味しく楽しく食事をしたい/食事環境を見直そう[援助員:川崎真吾]

はじめに

体調が不安定になった事をきっかけに食事摂取量が減少した方、食事中に車椅子で食堂内を散歩されて落ち着かない方、食事を配膳してもなかなか食べられない事が多く、摂取量が不安定な方にどうにかして楽しく美味しく食事を取って頂きたいと思いました。今回は食事環境を変える事によって、食事を美味しく楽しく食べて頂けるように取り組んでみました。 対象期間 6月中旬頃より開始

事例の取り組み

事例(1)

Aさん(女性 92歳 要介護度3)
●食事形態
 主食:軟食(ご飯 特小+お粥 特小を混ぜる)
 副食:姿食
●食事ADLレベル:箸が使える
●義歯:なし/自分の歯:26本

入所以来食事は元々ほぼ全量摂取される方でしたが、今年6月初め頃より、体調を崩し、食欲の低下が見られるようになりました。体調がやや回復してもこの状態が続きました。 食事を何とか食べて頂けるようにと、今までは車椅子のまま食事をたべていましたが、気分転換に椅子に座り直して頂く様にしました。しかし、椅子では足がしっかり床に届かないので、踏み台を置かして頂きました。 その結果、二十日ごとに前期は5.6割 中期は8.6割 後期は8.7割でした。 体調不良になる前の2ヶ月の平均は9.1割だったので、徐々に食事量は回復してきました。 また体調不良・食事摂取量の低下に伴い、体重にも変化がありました。 6月は38.5kg・7月は37.3kg・8月は38.4kgとなりました。 体重測定は毎月第一木曜日に実施していますので、6月の体重は体調を崩される前に測定しています。7月の測定時には体調も安定して、食事摂取量が増えていましたので、この頃から体重も増加してきています。8月には食事摂取量も安定していましたので、体重も増加しています。 食事量の回復の要因は体調の改善によるものなのか、食事の環境を変えた事によるものなのかは定かではありませんが、食事を食べるきっかけにはなったのではないでしょうか。ご本人も「椅子の方が落ち着く」と言われているので、このまま継続していきたいと思います。

事例(2)

Bさん(女性 81歳 要介護度3)
●食事形態
 主食:粥
 副食:キザミ食
●食事ADL:スプーンが使える
●義歯:上下あり

車椅子で食事をされていましたが、落ち着きが無く配膳する前に散歩に行かれる事が頻繁にあり、食事の途中であっても、あちこち散歩されている状況であり、再び食堂に誘導しても食事はあまり摂取出来ていない事が多かった。

落ち着いて食事して頂く為に、配膳する直前に車椅子から椅子に移って頂き、静かな環境で食べて頂けるように食事席を変えてみました。 実施開始当時はそれまでの食堂の席ではなく、静かな環境にと思い食事席を代わって頂いたのですが、ご本人の中では以前の席の方が落ち着かれていたのか、何度も以前の席に戻ろうと立ち上がられていました。その為、再検討して以前の席で椅子に座って食べて頂くようにしました。

その結果、食事配膳前に席を離れられる事は減りました。又、配膳後食事に手をつけずに離れられる事も無くなりました。しかし、食事途中で立ち上がられる事は現在でも見受けられます。その後、食事を勧めると食べられる事もありますが、「いらない」と拒否される事もあり、全量摂取されていないもののご本人の中では、食事を済ませたと思い、お席を立ち上がられたのだと思われます。立ち上がりによる転倒の危険もありますが、現在では見守りが出来ていて、転倒事故も起こっていないので、この状態で食事を落ち着いて食べて頂く事に繋がっていると思われるので、今後も転倒に留意しながら継続して行きたい。

事例(3)

Cさん(女性 93歳 要介護度5)
●食事形態
 主食:粥とパン(好きな方を食べて頂く)
 副食:ミキサー食
●食事ADLレベル:スプーンが使える
●義歯:なし/自分の歯:なし

食事を配膳してもなかなか手をつけようとされず、皆さんが食事を済まされて、食堂に他利用者様が少なくなり、静かになると、黙々と食事される事が続いていました。
問題として食事量の減少と食事時間が長くなりすぎる事により、食事が冷めてしまうので、益々食事が進みにくくなると考えられます。又、離床時間が長くなるので、ご本人の負担が大きくなります。それを改善する為に食堂の席を静かな場所へ変えてみました。

その結果、直ぐに食べ始める事も多くなり、食事も適温の間に済まされる事も多くなりました。以前の席は食堂の中心近くにあった為、どうしても周囲がざわついていたので、ご本人にとっては食事を食べる環境ではなかったのかもしれません。しかし、食堂の端の静かな場所に変わった現在も、直ぐに食べ始めない事もあり、摂取量にもムラはありますが、ご本人の嗜好の影響が大部分を占めているように思います。

終わりに

今回の事例研究を通して、食事環境を少し変えてみる事で、利用者様の気分転換にもなり、食事摂取量が増加する事もあるのだと知りました。A様の摂取量の減少に関しては体調不良が原因だったので、体調の回復に伴い摂取量が元に戻っただけかもしれませんが、食事時に車椅子から椅子に移って食事される事は喜んで頂けたので、良かったと思います。B様・C様に関しては現在も摂取量にムラがありますので、一人ひとりの利用者様に合わせて、安全面に配慮しながらより良い食事環境を提供していきたいと思います。

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